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第7話 意志の介在

Penulis: 青砥尭杜
last update Terakhir Diperbarui: 2025-01-30 13:01:07

 戸惑いの色を含みながらも考察する者の顔をみせるカイトに対して、ケンゾーは前提となった出来事から説明を始めた。

「この世界、テルスの神として実存するドラゴンは四柱いてね。そのうちの一柱であるナーガと呼ばれるドラゴンが、このミズガルズ王国の今の女王であるセルリアンに、異世界から人間を召喚する術式を下賜した。四十五年前のことだ。そのセルリアンが術式の構築を済ませてから、約半年後だったらしい。俺が召喚されたのはね」

 この異世界の神はドラゴンだと聞いたカイトは、召喚された際に一瞬だけ見えた気がするドラゴンのような巨大な影を思い出した。

「……東京タワーじゃなきゃいけない理由があった、とおじいさんは考えたわけですか?」

 カイトの問いにケンゾーは小さく首を横に振ってみせた。

「何の根拠もない、ただの直感でしかないよ。ただし、だ……ダイキもきみも、父親が失踪した現場って理由で東京タワーへ行った際に、召喚術式によってテルスに来ている。三人が肉親であることは偶然なわけもないのと同様に、三人とも同じ場所というのも何らかの意志がそこに介在したと考えるほうが自然だろ?」

 同意を求める区切り方をしたケンゾーに、カイトは素直に首肯してみせた。

「その何らかの意志、で召喚……三人の異世界転移を操ったんだろうドラゴン。そのナーガっていうドラゴン、神様とは意思の疎通はできるんですか?」

 カイトの問いに肯定する表情を浮かべならがも、ケンゾーは小さく首を横に振った。

「いや、ドラゴンは基本的にその姿を現さないんだ。人間との接触は有史以来数えるほどしか記録されていない。当時王女だったセルリアンとの接触は稀有な出来事なんだ」

 異世界の神として存在するドラゴンについて、今は考えても進展がなさそうだと判断したカイトは、

「父さん今、セナートっていう帝国にいるんだと聞いたんですが……」

 と会話を次へ進めるように、不在だという父親についての質問を口にした。

 当然の疑問だと示すようにゆったりとうなずいてからケンゾーが答える。

「そう。大陸を牛耳る超大国、セナート帝国にいる。二年前だ。ミズガルズとセナートの国境にあたる離島で、戦争と呼ぶにはあまりに短い四日間の衝突があってね。ダイキはそのとき敵国だったセナート帝国に投降した。筆頭魔道士団の首席魔道士であり、総大将だったダイキが投降したことで戦争はあっさり終結した。すぐに戦後の和睦も済んだ。ミズガルズはダイキの身柄を返還するように要求したが、それはセナート帝国に拒否された」

 カイトは露骨に眉をひそめた。

「捕虜として二年もってことですか?」

 カイトの疑問に対し、ケンゾーはわずかな困り顔を浮かべてから答えた。

「それに関しては、何というか微妙なとこなんだ……ダイキは聖人としてセナート帝国で特別な待遇を受けている、らしい。セナート帝国の帝都マスクヴァで、治癒魔法による治療を行っているという情報も届いてる」

 ケンゾーが明かした意外な状況に、カイトは素直に驚きを口に出した。

「聖人として、ですか……」

「ああ、このテルスじゃ召喚術式に応じた俺とダイキ、そして、きみだけが治癒魔法を使える。ウァティカヌス聖皇国の聖皇から聖魔道士っていう特別な称号を授与されたこともあって、いつの間にか聖人なんて呼ばれ方が世界に広まってたんだ」

 異世界で祖父と父が置かれた立場を聞いたカイトは、自分がこれから置かれる立場を予感したことで、その戸惑いを隠せなかった。

「……俺は、聖人なんて呼ばれ方をするような、人格も人徳も、そもそも信仰心をまったく持ってないんですが……」

 カイトの率直な言葉を受け入れるように、ケンゾーは「うんうん」とゆったりとした首肯で応じてから、カイトをまっすぐに見つめた。

「俺もだよ。聖人なんて存在には程遠い、ただの凡夫だ。それでも、だ……力を持ってしまったら、その力に応じた責務が生じてしまう。それが世界にとって特別な力なら尚更だ。違うかい?」

 同意を求めるケンゾーに対し、カイトは弱いうなずきしか返せなかった。

「それは……そうだと思います、けど……」

「うん。今は、すぐに受け入れろとは言わない。でも覚えておいてくれ。その力に応じた立場へ置かれた者は、その立場に応じた責任も同時に背負う。それは、このテルスでも、この激動する時代でも変わらない」

 じっと見つめながら向けられるケンゾーの言葉を、カイトは素直に受け入れることにした。

「はい。それは理解できます……ところで、この世界は中世ではないんですね?」

 カイトが聞き返した「中世」という単語に、ケンゾーは意外そうな表情を浮かべた。

「中世? どうしてそう思ったんだい?」

「俺がよく読んでる漫画とか小説だと、異世界といえば中世っていうのが定番になってるんです」

 ケンゾーは「へえ……」と軽い感嘆を漏らしてから、テルスについての説明を加えた。

「テルスは地球で言うところの中世とはだいぶ遠いな。近世から近代ってところだよ。暦がひじりのれきで聖暦と書くけど、今年は一八八九年だ。日本だと明治も後半に入った頃だな。テルスは地球と符合している部分が多くてね。蒸気機関の発達とか大体は十九世紀末って感じだ。ただ、魔法が存在してるせいでの影響も当然あって、文化とか技術発展では違う部分も少なくない。鉄砲や大砲なんかが発達してなかったりね」

 兵器とはいつの時代でも最新の技術が用いられる文明の指標であると認識していたカイトは、ケンゾーの説明の最後の部分に強く関心を引かれた。

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