เข้าสู่ระบบ戸惑いの色を含みながらも考察する者の顔をみせるカイトに対して、ケンゾーは前提となった出来事から説明を始めた。
「この世界、テルスの神として実存するドラゴンは四柱いてね。そのうちの一柱であるナーガと呼ばれるドラゴンが、このミズガルズ王国の今の女王であるセルリアンに、異世界から人間を召喚する術式を下賜した。四十五年前のことだ。そのセルリアンが術式の構築を済ませてから、約半年後だったらしい。俺が召喚されたのはね」
この異世界の神はドラゴンだと聞いたカイトは、召喚された際に一瞬だけ見えた気がするドラゴンのような巨大な影を思い出した。
「……東京タワーじゃなきゃいけない理由があった、とおじいさんは考えたわけですか?」
カイトの問いにケンゾーは小さく首を横に振ってみせた。
「何の根拠もない、ただの直感でしかないよ。ただし、だ……ダイキもきみも、父親が失踪した現場って理由で東京タワーへ行った際に、召喚術式によってテルスに来ている。三人が肉親であることは偶然なわけもないのと同様に、三人とも同じ場所というのも何らかの意志がそこに介在したと考えるほうが自然だろ?」
同意を求める区切り方をしたケンゾーに、カイトは素直に首肯してみせた。
「その何らかの意志、で召喚……三人の異世界転移を操ったんだろうドラゴン。そのナーガっていうドラゴン、神様とは意思の疎通はできるんですか?」
カイトの問いに肯定する表情を浮かべならがも、ケンゾーは小さく首を横に振った。
「いや、ドラゴンは基本的にその姿を現さないんだ。人間との接触は有史以来数えるほどしか記録されていない。当時王女だったセルリアンとの接触は稀有な出来事なんだ」
異世界の神として存在するドラゴンについて、今は考えても進展がなさそうだと判断したカイトは、
「父さん今、セナートっていう帝国にいるんだと聞いたんですが……」
と会話を次へ進めるように、不在だという父親についての質問を口にした。
当然の疑問だと示すようにゆったりとうなずいてからケンゾーが答える。「そう。大陸を牛耳る超大国、セナート帝国にいる。二年前だ。ミズガルズとセナートの国境にあたる離島で、戦争と呼ぶにはあまりに短い四日間の衝突があってね。ダイキはそのとき敵国だったセナート帝国に投降した。筆頭魔道士団の首席魔道士であり、総大将だったダイキが投降したことで戦争はあっさり終結した。すぐに戦後の和睦も済んだ。ミズガルズはダイキの身柄を返還するように要求したが、それはセナート帝国に拒否された」
カイトは露骨に眉をひそめた。
「捕虜として二年もってことですか?」
カイトの疑問に対し、ケンゾーはわずかな困り顔を浮かべてから答えた。
「それに関しては、何というか微妙なとこなんだ……ダイキは聖人としてセナート帝国で特別な待遇を受けている、らしい。セナート帝国の帝都マスクヴァで、治癒魔法による治療を行っているという情報も届いてる」
ケンゾーが明かした意外な状況に、カイトは素直に驚きを口に出した。
「聖人として、ですか……」
「ああ、このテルスじゃ召喚術式に応じた俺とダイキ、そして、きみだけが治癒魔法を使える。ウァティカヌス聖皇国の聖皇から聖魔道士っていう特別な称号を授与されたこともあって、いつの間にか聖人なんて呼ばれ方が世界に広まってたんだ」異世界で祖父と父が置かれた立場を聞いたカイトは、自分がこれから置かれる立場を予感したことで、その戸惑いを隠せなかった。
「……俺は、聖人なんて呼ばれ方をするような、人格も人徳も、そもそも信仰心をまったく持ってないんですが……」
カイトの率直な言葉を受け入れるように、ケンゾーは「うんうん」とゆったりとした首肯で応じてから、カイトをまっすぐに見つめた。
「俺もだよ。聖人なんて存在には程遠い、ただの凡夫だ。それでも、だ……力を持ってしまったら、その力に応じた責務が生じてしまう。それが世界にとって特別な力なら尚更だ。違うかい?」
同意を求めるケンゾーに対し、カイトは弱いうなずきしか返せなかった。
「それは……そうだと思います、けど……」
「うん。今は、すぐに受け入れろとは言わない。でも覚えておいてくれ。その力に応じた立場へ置かれた者は、その立場に応じた責任も同時に背負う。それは、このテルスでも、この激動する時代でも変わらない」じっと見つめながら向けられるケンゾーの言葉を、カイトは素直に受け入れることにした。
「はい。それは理解できます……ところで、この世界は中世ではないんですね?」
カイトが聞き返した「中世」という単語に、ケンゾーは意外そうな表情を浮かべた。
「中世? どうしてそう思ったんだい?」
「俺がよく読んでる漫画とか小説だと、異世界といえば中世っていうのが定番になってるんです」ケンゾーは「へえ……」と軽い感嘆を漏らしてから、テルスについての説明を加えた。
「テルスは地球で言うところの中世とはだいぶ遠いな。近世から近代ってところだよ。暦がひじりのれきで聖暦と書くけど、今年は一八八九年だ。日本だと明治も後半に入った頃だな。テルスは地球と符合している部分が多くてね。蒸気機関の発達とか大体は十九世紀末って感じだ。ただ、魔法が存在してるせいでの影響も当然あって、文化とか技術発展では違う部分も少なくない。鉄砲や大砲なんかが発達してなかったりね」
兵器とはいつの時代でも最新の技術が用いられる文明の指標であると認識していたカイトは、ケンゾーの説明の最後の部分に強く関心を引かれた。
晴れて夫婦となったカイトとストーリアが、結婚を機に延び延びとなっていた引っ越しを披露宴前日までに済ませた二人の新居へと戻ったのは、6月の太陽がすっかり沈んだ頃合いだった。 サイオン公爵としてサイオン領を拝領しているカイトではあったが、筆頭魔道士の首席魔道士としての職務を優先させ、王宮からほど近い位置にある王都の中でも有力な貴族の所有する屋敷の建ち並ぶエリアが二人の新居として選ばれた。 御三家の中でも王都に最も多くの土地を所有するガンディーニ家の所有していた屋敷を王室が買い取り、改装された屋敷は公爵でもあるカイトが構える屋敷としては最小限の大きさに抑えられた。 カイトの希望を宰相セルシオが聞き入れた結果として選ばれた小振りな屋敷は、ストーリアの希望もあってそこで働く使用人も最小限に抑えられた。 使用人の面談などはストーリアがすべて行い、それがストーリアにとってサイオン公爵夫人としての最初の仕事となった。 主である二人の帰宅を待っていた使用人たちにストーリアが本日の業務終了を告げてから、食堂へと移動したカイトとストーリアは互いにどこか落ち着かなかった。「なにか飲まれますか?」「ああ、そうだね……いや、自分で淹れるよ」「では、わたしは湯浴みしてまいります」「うん……」 食堂に残ったカイトは酔い醒ましのハーブティーを淹れることにした。 何か体を動かしていないと落ち着かない自分を少し情けなくも思ったが、初夜を前にして湯浴みしている妻を悠々と待っているだけの胆力など今の自分にはないとカイトは自認していた。 カイトが食堂でハーブティーを飲んでいると、湯浴みを終えたストーリアがシルクの寝衣で現れた。 頬をかすかに上気させたストーリアが、カイトの目にはやけに艶めかしく映った。「カイト様も湯浴みなさいますか?」「あ、ああ、うん。そうするよ……そうだ、ストーリアにお願いがあるんだけど」「なんでしょうか?」「俺に対しての敬語はもう無しにしない?」 カイトの提案を聞いたストーリアが右手の人差し指を頬にあて、少し迷った顔を作ってみせる。「そうですね。努力してみますが、すぐには難しいです」「そうか。うん、分かった。おいおいだね。じゃあ、湯浴みしてくるよ……あ、もう一つだけお願いがあって……」「なんでしょう?」「これからは寝るときに香水はつけないで欲
激動の聖暦1890年に、青葉の薫りを運ぶ爽やかな風が吹き抜ける6月の15日。 カイト・アナンとストーリア・カストリオタ両人の挙式がレザレクション大聖堂で執り行われた。 6月中の挙式という新郎新婦の希望を尊重した宰相セルシオの配慮により、ミズガルズ王国の筆頭魔道士団の首席魔道士であり王配直系の公爵でもあるカイトの結婚式としては、異例の短い準備と告知の期間による挙式と披露宴となった。 天候に恵まれた日曜日の大聖堂には、王国の英雄として人気を博すカイトの結婚を祝うため多くの人々が朝から詰めかけていた。 当初、カイトは結婚式を家族を中心とした小規模なものに出来ないかと希望を伝えてみたが、それはセルシオによって即座に却下された。「我が国の首席魔道士であり、対外的にも最重要人物である卿の挙式は、国家行事に等しいものです」 セルシオの言葉は真っ当なもので、ストーリアも同様の理解を示したため、カイトは宰相の決定を受け入れざるを得なかった。 カイトの結婚に際しては王家の中で一悶着もあった。 王配であるケンゾーの孫に当たるカイトの結婚相手は、タンドラ王太子の長女であるヴェルデ王女というのが半ば暗黙の了解として、王家全体の意向となっていたのが原因だった。 カイトをテルスへと召喚した術式を構築したヴェルデ本人も、自身がカイトの妻となるのは当然だと認識していた。 女王セルリアンとケンゾーの長子であるタンドラ王太子はカイトに対し、ヴェルデを正妻としてストーリアは公妾、いわゆる側室という形で迎え入れてはどうかと、二人きりでの面談の席を設けて提案をした。 カイトはその席での返答は保留し、ケンゾーとセルリアンにストーリアを本妻とするための協力を申し出た。 ケンゾーはすんなり快諾し、セルリアンも王太子側との関係を憂慮しつつも了承した。 タンドラ王太子も女王の意向とあっては表立っての反対は取れず、カイトがストーリアを本妻として迎え入れる結婚を阻止することを断念した。「あなたはストーリアを妻とし、病める時も健やかなる時も、悲しみの時も喜びの時も、貧しい時も富める時も、これを愛し、これを助け、これを慰め、これを敬い、その命のある限り心を尽くすことを誓いますか?」 大司教からの誓約の問い掛けに答えたカイトとストーリアは、観衆から送られる祝福の声に応えつつ儀装馬車へ乗り込み、披
「えっ……」 目を丸くするストーリアに、カイトがあたふたする自分を隠さずに声を掛ける。「驚くよね、そりゃ。ほんとに急で、ごめん」「はい……そうですね。驚いてしまいました」「だよね……」 カイトは続ける言葉を探した。 帰国する船上で幾度となく言葉を組み立てていたつもりだったが、実際に初めてのプロポーズとなるとシミュレーションした通りには言葉を続けることが出来なかった。 カイトの動揺を察して、先に口を開いたのはストーリアだった。「わたしで、よろしいんですね?」 カイトは強く大きな首肯を返すと、今回の遠征の間に考えていたことをストーリアへ率直に伝えようと決めた。「俺には何があっても帰らなきゃいけない場所が必要なんだって……思ったんだ。それが無いと俺は、いざって時に自分が背負ってる重責とか立場から逃げるっていう選択肢を、頭の片隅にキープし続けちゃうんだろうなって……。ストーリアと築く家庭を、俺の還るべき場所にさせて欲しい……身勝手な申し出なのは分かってる。でも今の俺には、ストーリア以外は考えられなかった」 カイトの飾らない本心から出る言葉を、まっすぐな目で受け留めていたストーリアは一度ゆっくりとまばたきしてから答えた。「わたしは離れませんよ? それでも、よろしいんですか?」「うん、もちろん。俺も離れる気はないよ」「……分かりました。カイト様の還る場所は、わたしがつくります」 快諾の返答を聞いて全身の緊張が一気に解けたカイトを、まっすぐに見つめたストーリアは、「ただし、一つだけ条件があります」 と真剣な表情で言葉を続けた。「条件……なにかな?」 肩をふたたび強張らせるカイトに向けて、ストーリアは真剣な眼差しのまま条件を告げた。「もし、わたしの身に何かあっても、自分と結婚したせいだと御自身を責めないでください。それが条件です」 ストーリアが口にした条件が、思いもしなかったものだったことにカイトは驚きを隠せなかった。「……ごめん。俺と結婚することで、ストーリアの身に危険が及ぶって可能性を、俺は深く考えられてなかった……」 自身の浅慮を詫びるカイトに向けて、ストーリアは微笑みかけた。「万が一、もしもの話です。カイト様はこの国の英雄であり、世界の英雄となられる存在。英雄たる方の妻が何も負うものが無いなんてことはあり得ません。ただ、わた
首席魔道士であるカイトを始めとする筆頭魔道士団トワゾンドール魔道士団に席を置く魔道士四名を乗せた大型汽船は、ほぼ予定通りの就航を終え、五月二日の昼過ぎにミズガルズ王国の王都プログレの港に錨を下ろした。 ベンガラから先行して出航した商船に連絡を頼んでいたこともあり、プログレの港にはノンノが出迎えに来ていた。ノンノから少し離れた位置には控えめに立つストーリアの姿もあった。 船から降りて約三ヶ月ぶりとなる本国の土を踏んだカイトのもとに、快活な笑みを浮かべたノンノが息を弾ませて駆け寄った。「お疲れ様! 長かったねえ」 ノンノはカイトへ声を掛けるやすぐにピリカへと視線を移した。「おかえりっ! カイト卿とは上手くいった?」 ノンノの軽い調子に合わせて、ピリカが大袈裟にがっかりとした表情を作ってみせる。「ううん。それが、残念ながら戦果なし」「ええー、三ヶ月も一緒だったのにぃ?」 演技口調で驚いてみせるノンノに、アルテッツァが微笑みかける。「変わらず元気そうで、安心したよ」「それは、こっちのセリフでしょ。疲れてると思って大袈裟な出迎えは却下しといたんだから」 ノンノが歯を見せる笑顔をみせながら答えると、アルテッツァが配慮への感謝を口にした。「それは、ありがたいな。確かに、思いのほか長期の任務になったからね。さすがに、ゆっくりしたいのが本心だよ」「でしょ。さしものアルテッツァ卿でもお疲れだよね。サクッと陛下への報告済ませちゃって、ゆっくりするといいよ」「ありがとう。そうさせてもらうよ」 ノンノとアルテッツァが交わす気心のしれた会話を横目に、カイトが少し後方で遠慮がちに立つストーリアへ歩み寄ると、ストーリアは深々と頭を下げた。「長期にわたるお務め、お疲れ様でございました」「うん。思ったより長くなっちゃったよ、ごめん。ただいま」 カイトの言葉に顔を上げたストーリアが、微かに潤ませた赤褐色の瞳で帰還した主を見つめる。 色素の薄い肌を際立たせるように浮かぶそばかすが愛らしいとカイトはあらためて思った。「屋敷に戻ったら、その、相談があるんだ。お土産もその時に。もうちょっとだけ待っててもらえるかな」「かしこまりました。お待ちしております」 カイトら帰還した筆頭魔道士団の四名を乗せた王室所有の儀装馬車は、衆目を集めながらも緩やかな速度で王宮へと向か
四月二十五日。天候に恵まれた金曜日の昼前。 前日の送別会での盛り上がりを微かに匂わす魔道士たちが、出航の準備を済ませた二隻の汽船が待つ河川港に集まった。 ゲルマニア帝国のアイギス魔道士団に席を置くカレラとクワトロ、及びガリア共和国のシャノワール魔道士団に席を置くファセルとルネボネの四名は、各々の本国へ戻るために一旦ウァティカヌス聖皇国へと向かう汽船に同乗することが先に決まっており、その日程に合わせてカイトらトワゾンドール魔道士団の四名にはミズガルズ王国の王都プログレへと向かう汽船が手配されていた。 統治領を治めるブリタンニア連合王国の筆頭魔道士団である、メーソンリー魔道士団に席を置く新たな駐屯指揮官が赴任するまでの期間はベンガラに留まることとなったアクーラとエランは、共に連合側の部隊を組んだ魔道士たちを見送る形となった。「また会える日を楽しみにしています」 朗らかな笑みを浮かべながら右手を差し出したカレラと、笑顔で応じたカイトが握手を交わす。「はい。出来るなら、戦場ではない平和な機会で」 他国の、特に地理的に離れた国家間の筆頭魔道士団に属する魔道士同士が戦場以外で会うことは、まずあり得ないと知りながらも素直な希望を口にするカイトへ、カレラは笑顔で応えてみせた。「何ともカイト卿らしいですね。そうですね……そうなることを、あたしも願うとしましょう」 カレラが賛意を表したタイミングで二人へ歩み寄ったファセルが、しなやかな所作で右手をカイトの前へ差し出した。「次に会うときまで、更に男を磨いておくのよ」 ファセルの意外な言葉につい破顔したカイトが握手に応じる。「はい。俺なりに努力してみます」「ダメよ。それは出来ない男の返答ってものよ。磨いておきます、ときっちり断言しなくちゃ」「分かりました。磨いておきます」「よろしい」 満足気に頷いたファセルがやわらかな笑みをカイトへ向ける。 別れの挨拶が一段落したタイミングで、機会を見計らっていたアクーラが背後からカイトに抱きついた。「さみしくなりますねえ」 カイトの耳元を吐息で撫でるようにささやくアクーラの、背中で感じる豊かな柔らかさにどぎまぎしながらもカイトは率直な言葉を返した。「はい。俺もさみしいです」 西方列強の魔道士として各々が重責を担うエース格であるカレラ、ファセル、そしてアクーラは
アクーラが勝者となった模擬戦を見届けたラブリュス魔道士団側の反応は、連合側の喝采を引き立てるかのように対照的で静かなものだった。 ヴァイオレットだけが敗者となったアリアのもとへと駆け寄ったが、そのヴァイオレットも寄り添うだけでアリアへ声を掛けることはなかった。 無言で歩き始めたティーダとダイキを先頭にして、ラブリュス魔道士団は撤退を始めた。 ぞろぞろと河川港へと向かって歩を進める漆黒の軍服の列にアリアは無言で加わった。 この場を去るダイキを見送る形となったアルテッツァもまた無言だった。 胸中で浮かんでは消える言葉たちを喉の奥で堰き止めるアルテッツァと視線を合わせたダイキが、「アルテッツァ卿!」 と大声で呼び掛ける。 唐突な呼び掛けに驚くアルテッツァに対し、撤退の足を止めたダイキは一度大きく頭を下げると、離れたアルテッツァへ届くよう大声を張った。「こんなこと言える立場じゃないってことは重々承知の上で、敢えて言う! カイトを頼みます!」 今後のキーパーソンとも成り得る「裏切りの聖魔道士」が発した意外な言葉に、この世界でも指折りの魔道士たちが疑問の視線を向ける中でただ一人、首肯を返したアルテッツァは微苦笑を浮かべていた。「元より承知!」 アルテッツァの大きな声での返答を聞いたダイキは右手を挙げて応じると、もう一度大きく頭を下げてから撤退の列へと戻った。 ラブリュス魔道士団が去った広場に、それまで建物に籠もっていた街の住民たちがおそるおそる様子をうかがいに出てくる。 アクーラにポンっと背中を押されたクラリティは、広場の中央にある噴水のもとまでゆっくり歩を進めると、一様に不安を浮かべる住民たちに向かって宣言した。「ご安心ください! セナート帝国は撤退しました! ここに集っている世界屈指の魔道士たちはヒンドゥスターンの味方です!」 クラリティが高らかに宣言すると、住民たちが一斉にわっと歓声を上げた。 ベンガラの役人たちは吉報を伝えるために街中を走り回り、カンカンカンと短い間隔で鳴っていた警鐘に代わって長い余韻を持つ教会の鐘が平時の再来を告げた。 カイトら十名からなる連合サイドの魔道士たちは、一旦ベンガラに滞在することを決めると役場ではなく宿へと移動した。 ヒンドゥスターン王国内に構築されたブリタンニア連合王国の情報網によって、即日ヒンド







